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恋愛ADV(エロゲ・ボブゲ・乙女ゲ)中心の備忘録

「赫炎のインガノック -what a beautiful people-」の感想・レビュー

喝采せよ!喝采せよ!

本文だいたいネタバレ、シャルノスのバレもやや含む。

 

大人のおとぎ話だった。こと18禁ゲームの評価でその言葉を選ぶとエログロを彷彿させるけど、だいたいその通りです。R指定が付くような猟奇描写はないもののインガノックの世界観上身体的なハンデや売春もえがかれ、ヒロインとの行為もライアーによくある数クリック箸休めではなくキャラクターの心情をえがくのにとても重要なシーンだった(特にアティが光る)。アダルト要素があるからこそ描けた、薄暗さに沈殿している光がきらめく「大人のおとぎ話」だった。

 

また、先月読了したシャルノスと同ブランドかつ同(スチパン)シリーズである。ということで比較するなら、完成度でいえば今作に軍配があがるものの好みでいえばシャルノスに傾く。どちらもセンス・オブ・ワンダーな終盤はおなじだが、前者はシナリオがだれないうえになにより「異形都市インガノック」の唯一無二な雰囲気と重厚な設定の渦がすばらしい。一方、シャルノスの「機関都市ロンドン」も劣らず魅力を放っているが、シナリオに焦点を当てると起承転結でいう”承”の中だるみが否めない。ただ、シャルノスはラストの爆発力がすさまじく、”百億の夜を過ごした孤独な王”に手を伸ばす”あきらめない少女”のボーイミーツガールじみたメルヘンがメチャクチャ良く、そこが自分の好みにドツボだったので一点突破という意味ではインガノック以上の魅力を放っていた。

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「漆黒のシャルノス ~What a beautiful Tomorrow~ Fullvoice ReBORN」の感想・レビュー

待て、しかして希望せよ

本文だいたいネタバレ。

大人のおとぎ話だった。こと18禁ゲームの評価でその言葉を選ぶとエログロを彷彿させるけど、その要素はまったく無い。というか選択肢も恋愛要素もない、姫も王子もいない。ひとりの少女が諦めずに駆けた結果、百億の夜を過ごした孤独な黒色の王をすくいあげ明日へと進む、スチームパンク・ファンタジーだった。自分はそういった御伽噺が好みなので、この作品はツボだったし面白かったです。特に、最後の展開が光る。

 

以下、感想の箇条書き。 

ここからあらすじ。

舞台は1905年10月、
遠い昔から青空が見えない、薄曇の機関都市・ロンドン。

主人公は、王立碩学院の女学生・メアリ。
猫のような縦の瞳孔の「黄金瞳」を片目に持つ彼女だが、生来のものではなく、特別なきっかけも無いまま突然得たもの。目立つ以外は支障がないのでほっといて日常を過ごしていた。

ところがある日、幼馴染で同級生そして親友であるシャーロットと共に倫敦を騒がす怪物事件に巻き込まれる。その事件の直後、シャーロットは目を覚まさなくなってしまう。

 

彼女を助ける手段を探していたメアリは、"M"という謎の眼帯男に出会い、利害の一致で契約する。
男は「黄金眼を目当てに集まる”怪物”」を、メアリは「親友を目覚めさせる約束」を。
そして、メアリは”生き餌”として、英国の夜の石畳を駆けることになる。

ここまであらすじ。

上記を読んだひとの7割くらいは、「ああ、メアリとMが交流するうちに思いを重ねて特別な関係になるんだな」と思うでしょう。しかし、その要素はほとんど無い。いや、結果はその通り(恋愛ではない)だけど、過程の要素がほっとんど無い。なので「”謎の眼帯男”と”普通の少女”のロマンス」に期待すると肩透かしを食らいます。ただ、「”謎の眼帯男”を救う”普通の少女”」にグッと来る方はプレイして損はない。

 

・スチパンシリーズ三作目。自分は前二作は未プレイだったけど、ふつうに楽しめた。(前作に関わってそうなキーワードも出ていたので順に読んだほうがもっと楽しめるんだろうな、とは思った。)自分は疎いのでぜんぜんわからなかったが、クトゥルフ神話の要素がかなりあったらしい。英国文学のモチーフは多少知識があったのでわかった、知らなくても問題ないがシャーロックホームズ関連はちょっぴり調べてから読んだほうがいいかも。(キャラをはじめとして、小ネタがかなり多かった。)

 

・全10章のシナリオ、ボリュームは中編ぐらい。エロゲであることを忘れるぐらいに健全でちょっとダークなスチパンファンタジー、深夜の京アニにあってもおかしくなさそう(ヴァイオレッ●エヴァーガーデンみたいな)。また、冒頭でも触れたように、選択肢のない一本道で、そもそもヒロイン攻略要素もないので、エロゲではなく「アダルト要素のあるビジュアルノベル」だった。
基本、「ゲストキャラが出る→メアリと交流する→なんやかんや→敵(ゲスト)出現→メアリ走って逃げる(ミニゲーム)→Mが出てきて左手とかを異形の姿にして敵ブッ倒す→ゲスト死ぬ→おわり→ED」の繰り返しで話が進む。この手の反復は食傷の原因だけど、個性豊かなゲストキャラと魅力的な世界、胸をときめかす謎の機関が続々出現するおかげで飽きず、むしろ「漆黒のシャルノス」という広い世界を感じるのに、人々が現れ交わり去るのは利点になった。ひとつの舞台では脇役ですら重要なファクターになるんだな、と思った。
逆に言えば「漆黒のシャルノス」という世界の雰囲気に酔えなければ、魅力は半減する。雰囲気は最高だけど、展開が面白いかというと最初と最後以外は首をひねるので。また、「《西インド会社》」「ドイツの黒騎士団(ゲルマン騎士団)」「フランスの魔術結社イルミナティ」「帝国統治組織《ディゲネオス・クラブ》」といった謎の秘密組織が複数登場するが、あまり掘りさげられないのでスパイスとして終わった印象。ただ、そこを描いてしまうとスパイアクションというか活劇っぽくて別物になりそうなので、少女と王様のおとぎ話で〆てくれてよかったと思います。「~What a beautiful tomorrow~」という副題が見事に回収されている、諦念と不屈、昨日と明日、絶望と希望、王様と少女、そういう物語だった。

 

嘘屋恒例のミニゲームがある。メアリが箱庭マップを駆けて、怪物たちから逃げながら4つの声を集めるゲームパート。難易度は絶妙で、簡単すぎずもなく難しすぎることもない。ただ、自分はわりと面倒だったので、このパートはあっても無くてもいい。このフルボイスVERだとカットもできたらしい。

 

・雰囲気がとにかく良い。まず、ゲームを開始した瞬間に流れるオープニングで胸をつかまれた。耳にここちよく響くアコーディオンの音、絵本のようなグラフィック、茫としたエフェクトがかかっているような映像もすばらしく、シャルノスの世界を見事にあらわしている。
キャラクターデザインを担当したAKIRA氏の版画ちっくな絵柄は、良い意味でエロゲの香りが無く、シャルノスの上品な世界に調和している。そして主題歌といい作中のBGMといい音楽が秀逸。自分はゲームパートはけっこう面倒くさかったのだが、そこで流れるBGMは好きだった。ケルト風というのだろうか、FORESTのときも思ったけれどライアーはおとぎ話関連のBGMのセンスが良すぎる。

 

・テキストの癖が強い。同じテキストが決まり文句のように、詩のようにリフレインされる。戦闘シーンもそういった感じなので、血沸き肉躍るバトルではなく舞台に必要な装置という印象。人を選ぶ文章だが、多彩な語彙とそれ裏付ける豊富な知識が「漆黒のシャルノス」の世界を衒学的ではない程度に確立させている。以下は自分のメモ(わからなかったので検索しようとメモしてた)
ウォルナットケーキ メスメル学 エイダ主義 バロンミュウヒハンゼン パラケルスス 知己 パンの大伸 マインフューラー 天網恢恢疎にして 偏在  粗忽 アレクサンドル・デュマ・ペール 古グリースの美の神。 

 

・濡れ場が本当にない、あっても青年誌レベル。スチルはまったくエロくない、エロゲのはずなのにモザイクすら無かった。構図も上半身しか見えないので乳首が見えたら「レアじゃん…」と思うレベル。なんなら店舗特典のテレカ絵柄とかのほうがエロかった。あんなシーンは本編で無い。
テキストも品があり、官能小説というよりは叙情的な小説にある色描写でエロくない。あまりにエロくないので途中からケーキとジュース片手に読んでいた、ケルト音楽と詩的な言葉が飾るおとぎ話なのでこのプレイスタイルは結構いいんじゃないでしょうか。そして女性主人公のメアリが処女喪失せずに幕を閉じたのはびっくりした、本当にアダルトゲームか?

 

・ボイスが良い。全員ハマり役で、なかにはキャラを複数担当する声優さんもいるが演技がうまいので全然わからなかった。主人公メアリを演じた”かわしまりの”さん、The"M"を演じた越雪光さんは、特に絶妙なキャスティングだ。前者は凛とした声が”諦めない”メアリの性質にぴったり。後者は重厚な低音がMのミステリアスさ、威圧感に合っている。

 

 

ハインツ
「古代や中世のように人々は伝承を恐れず、
実在のものではなく、創作されたものを愉しむというすべを知った。
「20世紀というこの繁栄に充ちた新時代と機関文明に駆逐されたはずのおとぎ話たち、
それが、蘇るんだ。」

この一文が、シャルノスの世界観を的確にあらわしていると思う。
思えばメアリとMが見に行った舞台もシェイクスピアで、彼の登場(もとい執筆した作品)により今まで伝承として恐れられていた妖精が「創作物」として娯楽に転化したとかなんとか(典拠は忘れたので正確かどうかはわからん)。シャルノスの舞台は19世紀なのでシェイクスピアとは年代は違うけど、示唆的でなんか面白いなと思った。
おとぎ話が現実を侵食するのか、人間が幻想を破壊するのか、その末はみなさん実際に読んで確かめてみてください。

 

以下、キャラクターの感想。

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「美少女万華鏡 -罪と罰の少女- 」の感想

絵がうまい、うますぎる。絵がうまい人は死体も嘔吐の絵もうまい。エンドロールで八宝備仁さんのお名前が背景担当にも書いてあったけど、絵がうまい人はなんでもうまい。

自分はシナリオが面白くなければ抜きゲーには手を出さないんだけれど、「美少女万華鏡」シリーズは”コスパが良くてクオリティも高くシナリオも面白い抜きゲー”と聞いたので買った。シリーズ第四弾である本作にいきなり手を出したのは、異性双子がいるから。予想にたがわず、姉弟の倒錯的な愛情が描かれるわけだけど、展開が予想外でおもしろかった。「罪と罰の少女」の副題は伊達じゃない。

もういちどみつけたよ。

なにを?永遠を。

それは 太陽と 番った

海だ。

中原中也の永遠が出るシーンが印象的。あとはネタバレ感想。

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「世界征服彼女」の感想メモ

感想メモと銘打っているのは、レビューといえるほど文章が整っていないうえにインストールしてたPCがクラッシュしてコンプできていないからです。備忘録サイトなのでそのまま載せる。

 

キュートな幼馴染は天才マッドサイエンティスト、彼女のワガママ世界征服を止められるのはキミだけ!

つり乙で有名な東ノ助さんのメインライター初デビュー作品。
ライトに楽しめる学園萌えコメディだけど、Navel特有の一癖も二癖もあるキャラクターが"萌え"から90度ズレているので一筋縄ではいかない。男嫌い百合っこや右翼系大和撫子を攻略できるのは稀有だと思う。東ノ助さんはジャックに憧れてなんやかんやでこの業界に入ったようなので(出典ね●トーク)ジャック譲りの軽快な会話劇とギャグが魅力的。でも情事の万歳三唱は爆笑、アダルトシーンでコントを披露するな。そこはジャックを真似しなくていいんだよ。反面「幼馴染が世界征服」の時点でリアリティも何も無いのはみんなお気づきとは思うけど"細かいことはいいんだよ!"なノリなので深みのあるシナリオではない。また、どのルートでも夢子が出張って各ヒロインと向きあうので、一度読むと展開がある程度わかってしまう。凡のシナリオを非凡なキャラで押し切っている。楽しい幼馴染との恋愛関係をどーにかこーにかがミクロな視点、幼馴染との関係が世界征服に繋がるマクロな視点。

クイックロード便利。BGMはアッチョリケさん担当で、個性的なキャラに負けないぐらい主張の強いテーマ。

余談だけど、主要キャラ全員おれつばの中の人だ、しかもぽっぽ以外のおれつばヒロインが今作でもヒロイン役やってる(夢子→鳴、亜子→ひよちゃん、椿子→明日香、子→幼少ヨージ、菜子→カンビナス)。サブキャラもヒロインの父親が迦楼羅(の中の人)だったり、下ネタヤンキー先生がリンダ(の中の人)だったり、友人はシュウちゃん(の中の人)。アルメンドラはえーりんで仕えているのが亜子様だからアレキサンダー…と思っちゃったよ。Navelスターシステムか?
以下、キャラの雑感メモ。

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おれつばVITA版√(コーダイン√)の感想メモ

厳密に言うとコーダイン√はおれつばRで追加されている。また、リンダ√のメモが無いのは、これは昔のメモだからです。備忘録なのでとりあえず投稿。

コーダイン√

東ノ助さんが担当しているようで、ジャクソンが筆を取った本編の雰囲気のままにコーダインと隼人がすこしずつ寄り添っていくのはウマいなと思ったし胸がときめいた。本編でも表現されていたけれど、大都市で人々がすれ違う風景や流れる雲をぼうっと見る感覚を隼人は好み、鳴もそれを共感し、コーダインは感じ取れない。コーダインの恋慕を隼人が受け取らず、(言い方がちょっと悪くなっちゃうけど)ぽっと出の鳴が恋人の座を勝ち取ったのはそれが大きく影響しているんだと思う。

コーダイン√でも彼女は隼人の"そういう感覚"は分からないんだけど、分からないなりに歩み寄って理解しようとする。隼人もコーダインの「みんなでカラオケに行く感覚」とか仲間とか友情とか青臭い関係はガラじゃないし合わないんだけれど、それでも歩み寄ろうとする。そしてフレイムバーズメンバーとカラオケに行く。分かりあえない者同士が相互理解を試みようとしてすこしずつ寄り添っていくのがとても良かった。これもひとつのカップルなんだなあ。

でも他ライターさんによる追加√ということで本編に匹敵するかと言われたらちょっと迷う。なぜなら「コーダインは本当にかわいいなあ」の一言で現せる√だから。鳴√では”やってしまった”森里くんの青臭いカッコよさや、バニィDの友情、カラオケでアイドルソングを歌ってくれることもあるLRさんの魅力など見所もあるんだけど、大筋は「コーダインかわいい」で終わる。なのでコーダインに魅力を感じないプレイヤーは点数ぐぐっと下がりそう。私はコーダインが好きでけなげで不遇な彼女(本編CG的には優遇だけど)の恋心が成就する世界を見れたことに素直に感動した。よかったね。