闇鍋.exe

恋愛ADV(エロゲ・ボブゲ・乙女ゲ)中心の長文置き場

「素晴らしき日々~不連続存在~ フルボイスHD版」の感想・レビュー

 

(2019/01/09.誤字があったので修正、ちょっと加筆。)

あけましておめでとうございます。
年末の挨拶を忘れてました。遅くなりましたが、それも込めて挨拶をします。このブログを定期的に訪れる方がいらしたら(ありがとうございます!)今年も細々と更新していく予定なので、よろしくお願いします。新年一発目は長年読みたかった作品。
核心バレは伏せるけど、それ以外はガバガバな感想。

 

読み進めるなら、できれば夏が良かったのかと思う。作中の時期が7月というのもあるし、爽やかな後味も合っているから。
思春期特有の万能感と閉塞感、90年代の終末思想とサブカルチャー美少女ゲーム特有のキッチュアンダーグラウンドな雰囲気、セックス&バイオレンス、ポップカルチャーと高尚。それらをビジュアルノベルゲームにブチ込み、抜けるようなbitの青空と言葉と音楽と旋律が加わったら、とんでもない化学反応を引きおこした。ビジュアルノベルのアダルトゲーム以外では描けない、唯一無二で代わりが無い作品。

 

f:id:kame0game:20190103193123j:plain

©ケロQ素晴らしき日々~不連続存在~」 トリビュートコンピレーションアルバム

07/20/2012-1999

 

いきなり引用の嵐。何のことかというと、この作品、「衒学的」と揶揄されても納得してしまうほど、戯曲やら哲学書やらクラシックやら教養を必要とする文化の引用が多い。物語のアクセントとかそういうレベルではなく、多い。非常に多い。というかクリア後に他のレビューを見に行ったら、物語の根底に流れているのがヴィトゲンシュタインの著書「論理哲学論考」らしい。

余談だが、"引用が多い作品"は、「引用したことにたいした意味がなくても引用作品自体が深みを持つので、奥行きがあるように思わせるため”””引用をする行為”””自体に意味を持たせる」(ややこしい)というパターンもあるけど、本作はそういうタイプじゃなかった。
上記は作中で印象的だった引用作品と公式のサウンドです。自分があとで勉強したいメモ。


また、キュートで美少女ゲーム然としたグラフィックとは裏腹に、抽象的で難解な問いが多く、エンタメと外れた要素が多い。そして読了してもいくつかの謎が残り、とある重要キャラの正体が結局なんだったのかわからない。真エンド読了した瞬間、脳内がクエスチョンマークでいっぱいになってしまった。
私が文系の院生だったり哲学部の出身だったり、そのあたりの知識が豊富であれば「なるほど、そういうことか!」と膝を打ったかもしれないが残念ながら乏しい。(なので、この記事では哲学の解釈には切り込まず、私が感じたことだけ記しておきます。なまじ知識が無いので、そこに触れると浅さがバレてしまうから。)


そしてトドメのカルト宗教いじめ陰湿暴力暴力ヤクヤクヤクヤク性性性性性電波電波電波電波電波。「怪作」と呼ばれてるのは知っていたし、そのあたりは納得のうえで読み始めたがそれでも3章を読むのはココロ折れかけた。
あとエロがマニアック。妄想・百合・女装・男がフェラ・机(誤字では無いです)・ふたなり・いじめ・レ●プ・獣●・シ●ブなど。そんなのが半分を占める。一応異性との和姦もある、でもア○ル多。

美少女ゲーム界隈で知名度が高い作品ゆえに、耳にタコが出来るほど言いまわされた垢の付いた言葉とわかって言わせてもらうが、「人を選ぶ」作品。そのなかでもさらに人を選ぶ作品

 

ただ、「不快でつまらなかった?」と聞かれると、それには全力で否を唱える。確かにワケがわからないし、難解だし、「2章の先生のシーンなんなんだよ、3章のいじめもキツい、怪電波が強すぎて何を言ってるかわからない。正反対双子美少女と電波清楚美少女に囲まれてアタシの日常が危うい系百合ゲーはどこへ?正月早々なにをやっているんだ?」と自問自答しかけた。
だけど、そんなカオスの中でも、とてつもなく光るシーンがある(私にとっては2章希実香ED、1章冒頭電車での由岐の独白、ピアノを演奏するシーン全般など)。あとヒロインほとんどが「空に落ちる」事で重要な存在へと転化する。ここも良い。


凄惨ないじめやバイオレンス等の「えげつない」絶望は、物語を読み進めるうえではモチベの関係でマイナス要素だが、同時にプラス要素でもある。キャラクターの”生””を鮮烈に彩り、プレイヤーに強烈に刻みつけるからだ。
すばひびは各ヒロインに必ずハッピーエンドがあり(このハッピーとは第三者から見てもハッピーという意味)(希実香エンドだけは毛色が違うかも)、幸せな””素晴らしき日々””を迎えるとそこで物語は終わる。電車で例えると途中下車だ。それ以上は語られない。バッドエンドを迎えることで物語は深層に進んでいく構造になっている。
ウィトゲンシュタインの「幸福に生きよ!」は、本作において固執低音のように語られるテーマで、それを強調させるためにこういう構造にしたのかな。と思ったらHD版付属オフィシャルアートワークスでその通りのこと言ってたわ。

 

すかぢ「今回のテーマを一言でまとめるならば、「幸福に生きよ!」です。(中略)それはそれとして今回は、それぞれのヒロインや主人公に必ずHAPPY ENDを入れてます。そのためには、表面をなぞった様な薄っぺらい絶望では萎えてしまう気がするのです。」

 

HD版付属オフィシャルアートワークスの16P

 


そして、なんだかんだで後味がものすごく爽やかなのだ。
この手の作品は、言いたいことだけ言って「あとはヨロシク!じゃあな!」とプレイヤーにモヤモヤを残すような、言ってしまえば作者の自慰に付き合わされてクタクタになるヤツもあるが、すばひびは満足と達成感を残す。あんな狂った序盤を見せられたのに、読後の不快感は不思議と無い。エンタメとしての体裁がちゃんと整っている。
まあ「終ノ空Ⅱ」エンドは今までをひっくりかえす物議を醸す展開だが、そういう哲学要素は"すばひび"では今に始まったことでないので、私は「萎え」とは思わなかった。ここは人によって別れる。
あと散々電波と言っているが、4章以降は物語の答え合わせとなっているので、そこからは分かりやすい。地面から100km離れたような浮世離れした話が3章までとしたら、4章以降はやっと地に足を付けてくれる。

 

HD版ということで画質は良いし、ビジュアルノベルゲームとしてのシステムは大体揃っている。絵柄は冒頭の通り(良い意味で)エロゲ然としてキュート。キャラデザや原画が複数人体制だが、違和感は無い。特に希実香や羽咲のデフォルメが良かった、この2人は特に表情がクルクル変わるキャラなのでカワイイ。昔の作品なので、その時代特有の古さを感じるっちゃ感じるがわたしはこの絵柄とても好き。

 

f:id:kame0game:20190104004508j:plain

体験版でも見れる冒頭

(左の音声調節は気にしないで。)
彩度の高い澄んだ青空は、「素晴らしき日々」という作品を印象的に彩るグラフィック。あとミッ●ィーやら神やら、電波でグロテスクでキッチュなデザインも良い味を出してた。

 

 まとめ

そんなこんなで一言でまとめると、良い作品だった。
哲学やら難しいことは今の私にはやっぱり難しいが、読了後はシラノや「猫と共に去りぬ」を読みたくなったし、ヴィトゲンシュタインにも触れたくなる。自分が疎い分野や知らない文化に触れたくなる作品というのは、やっぱり良い作品だと思う。あと全てを知ったあとに序章を読むと、1周目は電波にしか思えなかったシーンや言葉が「ああ、こういう事だったのか」と合点がいく。1周目とはまったく別の視点で読めるカタルシスがすばらしい。
すばひびは読了したから「はい、終わり」ではなく、スルメのようにずっと噛みしめて噛みしめるほどに味が出てくる。今の私が理解できないところも、数年後の私がプレイしたら別のものが見えてくるでしょう。だから良い作品。

 

あと、この作品の「兄妹」は物語のキーともいえるくらい重要な存在なのだが、正直なところ私の兄妹モノ好きセンサーには外れている。また、とあるエンドで死者が復活するのはちょっと解釈が違う。そして、同時期に発売された核心が似ている某美少女ゲームと比較すると、好みの問題でそちらに軍配が上がる(「私はその作品が美少女ゲームのなかで一、二を争うほど好き」なのもあるが)。でも、それを抜きにしても印象的で好きな作品。美少女ゲーム界隈で強く名前が挙げられるだけはある、完成度の高い作品だったよ。

 

あとはネタバレ込みのキャラ感想。

 

 

水上由岐(CV- かわしまりの

理想的で魅力的すぎて魅力を感じにくい人(褒めてる)。

 

f:id:kame0game:20190106005139j:plain

 

ざくろが彼女に惹かれた理由わかる。確かに由岐人格の卓司はスゴく魅力的。ほかの女性プレイヤーはどうなのかはわからないけど、わたしはかなり好みです。なぜかというと少女漫画の王子様みたいな少年が好きだから。で、ざくろもそういう少女漫画っぽいモノを好んでいるし趣味が似ている。線の細い容姿、男臭いところが無い(女性人格だし)、知的で柔らかい雰囲気、ほどよくユーモアもある。これはざくろは好きになるわ。

生前の由岐姉は、「お姉さん」として理想的。羽咲を庇って空に落ちるし、悪や淀を感じさせない、きれいすぎて魅力的で魅力を感じない(誉めてる)(私は由岐姉が好きです)。

 

でも唯一解釈が違う部分がある。由岐エンドの幽霊化。「死者は何があっても蘇らない。幻覚や妄想や夢以外でいっしょになることは出来ない。」が譲れない自分の哲学なので(他作品を挙げてしまうとドンピシャだったのは「ハピメア」)、幽霊化はちょっと萎えてしまった。でも追加エンドで皆守と仲良くやってるのは「良かったね」と思った。

 


高島ざくろ(CV- 涼屋スイ)


涼屋スイさんの声が印象的。ふわふわとして、夢見る少女のようにも怪電波を防ぐために頭にアルミホイルを巻く電波少女のようにも思える声。

序章の電波清楚少女の印象は章が進むごとにドンドン薄れていくのだが、彼女が「本当はどこにでもいそうなちょっと夢見がちでふわふわした少女」と(ざくろ視点なので)否応なしに叩きつけられる3章は残酷。その末がプレイヤーはわかっているから。

 

f:id:kame0game:20190106005130j:plain

 

このバーのマスターの言葉が印象的。ざくろを取り巻く環境は抗うのが難しいけど、学校という狭い場所以外にも彼女を迎えてくれる場所は絶対にあるし、それを示す言葉だと思う。だからあそこまで追いこまれて狂って命を絶った3章はしんどい。

 

なので、ざくろにとって「ある種の素晴らしき日々」エンド(3章のやつ)を見れたのは安心した。でも希実香と百合百合してるのは面食らった。希実香がざくろに巨大な感情を抱いてるのは2章でわかったけど、ざくろ→希実香の感情が肉欲オッケー百合感情とは思わなかったよ…。まあオッケーオッケー。

でもこの世界では羽咲が救われない、卓司の肉体を勝ち取るのは新しい由岐の人格だから。どのエンディングでも登場人物全員が救われる世界は無いんだよなあ。


若槻鏡・若槻司(CV- 小倉結衣)(CV-如月葵

らきすた」なのは意味がある双子。序章は「ぬいぐるみ・間宮羽咲」ではなく、「若槻鏡・若槻司」としての魂と器があるパラレルワールド?ってことなのかな。双子である意味、妹を守る意思の意味、名前の意味、存在の意味。それらが回収されるのにはびっくりした。ぬいぐるみのエロシーンはシュール。

f:id:kame0game:20190106005115j:plain

f:id:kame0game:20190106005213j:plain

この辺は対比になってるのかな、と思った

 


橘希実香(CV- 北都南

エンディングが卑怯。橘希実香は賢く、自分の行動を客観視しているうえで他人を巻き込む。救世主様の前で見せるチャーミングさで緩和されているけど、よくよく考えるとかなりはた迷惑な少女なのだがそんなことはエンディングで吹き飛んだ。ズルすぎる、あのエンディング。わたしは今作で彼女のエンディングが一番好き。身も蓋も無い言い方をすると「男とヤクキメて屋上でハイになって身投げ心中する」エンドなのだが詩的な言葉のせいなのかやたら美しい。そして、ふたりだけの地獄・破滅の甘美・どこ落ちエンドが好きなのでハシャいじゃった。その前のヤクキメ屋上ハシャギシーンも好き。

希実香エンドの間宮卓司は救世主様であることやその他諸々を投げ捨て、すべての人間の救済を忘れ、たった一人の少女のために、彼女の熱を抱きしめて空に落ちる。”人間”へと堕落する。ズルい。ズルすぎる。「救世主様」と「下僕」が最後の最期でベールを脱ぎさり、「希実香」と「間宮卓司」が対等になるのズルすぎる。

間宮羽咲(CV- 西田こむぎ

妹。美少女ゲームでよく見るかわいらしい妹だった。私は「兄妹」が好きだし近親関係アリアリのアリだけど羽咲とは行為無しで良かったのでは?エロゲにこういう事を言うのナンセンスだけど…。

f:id:kame0game:20190106010310j:plain

このシーンは切ないけど兄妹好きにはたまらなかった

 

 

間宮卓司(CV- 佐山森)

救世主様。ウジウジ中性少年の印象が一変、救世主様として目覚めた彼のカリスマ性はスゴかった。ツメがちょいちょい甘いけどオーラはスゴい。2章が長いこの作品で物語の半分近く(そこまで長くは無い?)を彼視点で追ってたワケですが卓司視点はトンでもなかったなあ。R18作品だからこそ出来る描写を惜しげもなくドンドンやっており、絶対に出ないけど万が一コンシューマ版が出るとしたら卓司存在を消されるんじゃないかと軽口を叩くほど。
あと佐山森さんの演技がすごい。実質、卓司と由岐と皆守と救世主様の4役ですね。よくここまで毛色の違うキャラを演じ分けた。

 

f:id:kame0game:20190106011343j:plain

f:id:kame0game:20190106011353j:plain

 

「卓司たちは結局多重人格だったのか?」って聞かれると微妙なラインだよね。フィクションだからデフォルメしてる、と言われればそこまでだけど同一性障害の症例に当てはまらないところがあるから。
でも、そこはたいした問題じゃなさそう。多重人格の症例とか苦悩に切りこむのは、すばひびにおいてメインじゃなさそうだから。

悠木皆守(CV-夏村伊介)

サイコパスバイオレンスから熱血少年漫画にジャンル変化。彼の印象が一番変わったな。映画ファイトクラブよろしく「お前を殺す」な人格の戦いはアツい。 

音無彩名(CV- 成瀬未亜


読了した人全員に聞きたいんですが彼女は何だったの?読了した瞬間、「エッ、彩名は結局なんだったの????」とクエスチョンマークが脳内を埋め尽くした。クトゥルフというか超常的な存在で、アレはこうだとかコレはどうだとか言葉で説明するのはナンセンスなのかな。