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恋愛ADV(エロゲ・ボブゲ・乙女ゲ)中心の長文置き場

VITA「月に寄りそう乙女の作法 ~ひだまりの日々~ 」の感想・レビュー

 

おもしろかった。
本作の要素を羅列すると「セレブ」・「女装(主人公)」・「女子校」・「主従」・「服飾」、華やかなモチーフがもりだくさん。そして登場人物のほとんどが良家出身なので、作品全体にやわらかく心地よい、ハイソな雰囲気がある。といっても苛烈なお兄様の存在や「才能」の残酷さも描かれているので、単なるキャッキャウフフで終わらない。

そして今作のテーマは「服飾」「才能」私も「才能」についてメチャクチャ考えさせられる環境にいた経験があり服飾が好きなので、朝日にすご~~く感情移入してしまった。ユザワヤとかトマトで生地を見ると楽しいよね。

 

おれつばが大好きなうえに同じnavel作品で好評価と来れば「本作もいつかやりたい!」と思いつづけて、やっと2018年にプレイできたのでよかった。おれつばは下ネタとスラングがメチャクチャ多く、私はそれも大好きだったんだけど本作ではその要素はほぼ無い。というか王雀孫さんがメインライターだと勘違いしてたんだけど違ったわ、それでも面白かった。小粋で軽快な会話劇はたまらないし、キャラクターもみんな個性的。ギャルゲーならではのブッ飛んだ性格だけど、なんていうか「そこ」に辿り着くまでの過程が描写されているから、「単なる変人」じゃなくて「同感できる変人」という印象だった。七愛の毒舌の意味とか、ユーシェが「~ですわ」「おーほっほほ」というテンプレお嬢様口調を使う理由とか。
それと兄様、兄妹(弟)ネタが好きなので朝日へ巨大な感情を抱く衣遠には正直萌えた。他人の面影を投影する系も好きなので余計にテンションが上がったよ。それはキャラ感想で書きます。


あと、自分はフィクションの世界ならそこまで気にしないけど、「他人の身体的な特徴をネタにするのは好ましくない」って話題がギャルゲで触れられるとは思わなかった。ユーシェはドンドンそれ言ってるものの、「トンチキな日本語」と「外国の人」という要素でうまくギャグに昇華してた。キャラクターの魅力を描くのがウマい作品だなあ。
それと、女性キャラ全員いい香りがしそう。いやギャルゲーの女の子はみんな良い香りしそうだけど、つりおつは「服飾」ようするに美容系がテーマなので「みんなメイクしてるんだろうな」と強く思う、という意味。ジップロックに化粧品いれてるキャラ絶対いない。湊は基本キャンメイク愛用だけどジルのミラーは昔から使ってそう(遊星のために「女の子っぽくなろう!」と思った時期から)

 

女装モノだけど「自分が男」という矜持を朝日(遊星)がそこまで深刻に考えてなかったので、「そういや男だったな」と思うことが多かった。男バレで周囲の葛藤とか同性だと思っている女の子の無防備な姿でウワワワ~とかあるけど、やっぱ朝日が雄(おす)というより雌(めす)の印象が強い。見た目はきれいなメイドさんで声も女の子でエロシーンもコンシューマ版だから見てないので余計。CGもメイド姿のままイチャイチャするのが多いし、なんか百合ゲーやってる気分だった。「女装モノ」という点に惹かれて買ってたら、ちょっと違うかな…とガッカリしたかも。でも私は「女装モノ」にそこまでこだわるタイプじゃないので、上記の部分はほとんど気にならなかった。

グラフィック

パステルカラーとやわらかい絵柄が作品と調和している。キャラデザ複数人だけど塗りが統一されているから気にならなかった。おれつばがメチャメチャ好きだけど西又先生の絵はそこまで好みではない(ごめんね)ものの、この作品ではそこまで気にならなかったよ。鈴平さんはつりおつで初めて出会ったけど好きな絵だった。


ひとつワガママを言わせてもらうと、テーマが「服飾」ならもう一段階「おっ」と思わせるようなデザインが見たかった。上から目線発言だし、わたしもそんな偉そうなこと言えるタイプじゃないけど従来の美少女ゲームの服飾デザインとそこまで差異を感じなかったので。でもデザイン、こと服飾においては好みや時勢や流行でコロコロ評価が変わるし、それこそ千差万別だから難しいね。

予約特典DLC衣装デザイン公開 | Caligula Overdose -カリギュラ オーバードーズ- 公式ブログ

たとえば、カリギュラの予約特典DLC私服。スポーツミックスでWEAEに投稿されてそうな、ゲームにしては珍しい私服だなと思ったよ。でもこれも人によっては難しい顔をするから服飾は難しい。上記の例は流行をくみとったファッションだから余計に好みが別れるんだろうな。つりおつみたいにドレス系ならメットガラが近いかもしれない。

まとめ

エロゲ(私がやったのはコンシューマ版だけど、元のレーティング的にブログのカテゴリーは「男性向き-成人」にしとく。)だけど、テーマ的に女性もハマりやすそう。 というか女性に薦めたいギャルゲー。
気持ちの良い主人公、好感を持てるキャラクターたち、服飾の知識がなくても面白いシナリオ、ポジティブな後味。カラフルなマカロンが入ったボックスをひっくりかえしたみたいに、にぎやかで品が良くてドキドキしてこりゃおもしろくないワケが無い。萌えゲーアワードを受賞しただけある良質なエンタメだ。
でもPC版でやっときゃよかったな~、コンシューマだからそういうシーンは全カットで「このあと絶対まだあったんだろうな」ってとこで切られるから見たかったよ。

 

すごく楽しん作品だけど欠点もある、ルートによって完成度が激しい。
個人的に、ルナ様>>>>ユーシェ>>瑞穂>湊。この順序は湊√がメチャメチャつまらないと言っているワケではなく、ふつうに面白い。というかルナ様√が抜きんでている、世間の評判もルナ様がぶっちぎりらしい。私はルナ様のようなタイプ(クーデレご主人様)はストライクゾーン範囲外なのだけれど、それでも朝日との関係にグッと来たし彼女の気高さには胸を打たれた。””さま””という呼称も付けちゃう、なので一番好きなルートはルナ様、でも好みのキャラは七愛とりそなと衣遠。そんな感じで面白かったよ、続編も買っちゃお。2とかFDとかバージョンがいっぱいあってまだ把握してないけど、りそな√があると嬉しいな。

 

 

小倉 朝日(こくら あさひ)/大蔵 遊星(おおくら ゆうせい

女装メイド主人公。わたしがやったのはコンシューマ版だから声が最初から付いていた、この作品は彼にボイスがあったほうがより楽しめる作品だと思った。


男だけど雄(おす)の印象ほとんど無い。女装モノは「いやバレるでしょ」って思わずにフィクションとして楽しむのが常だけど、遊星はバレないわ。いやまあフィクションのキャラだけどこれはバレないわ。女装への抵抗は見せるけど順応性が高すぎる。瑞穂√の水着でパッドを瞬間接着剤でくっつけるのは笑った、本人には笑い事じゃないから申し訳ないけど。
デザインの才能は足りなかったかもしれないけどパタンナーとして開花しているし料理とか家事系ひととおりこなすしハイスペック。華麗なる大蔵家のお家事情で日の光をあびれなかった彼が、シンデレラボーイ(シンデレラガール?)として成功していくさまは爽快。服飾への真摯な態度、どんなルートでもヒロインへの誠実さはゆらがない、甲斐甲斐しくてまっすぐで好感を持てる主人公だった。

 

大蔵 里想奈(おおくら りそな)

対人恐怖症ブラコン妹お嬢様。一人称が「妹」なの好き。
わたしは妹キャラが好きだし、つりおつは予備知識ほぼ無い状態で始めたのでりそなも攻略できるもんだと思ってた。できなかった。「ふたりの兄がいる」「上の兄への畏怖」「下の兄への好意」「特殊な家庭環境が人間性に影響を与える」「ゴスロリっぽい服装が好き(だよね?)」など、私の好きな要素が多いのに攻略できなかったうえに出番もそこまで多くないので印象がちょっと弱い。というか上の兄がいろんな意味で強すぎ。りそなに関しては続編を楽しみにしてる。

 

大蔵 衣遠(おおくら いおん)

苛烈な兄様。良く言えば高貴、悪く言えば選民思想。でも大仰な言い回しと笑い声がクセになるキャラで良いボスだった。あと遊星への巨大な感情が良かった、萌えた。
その感情はポジティブなものではない、というか色々入り混じってるけどとにかくバカデカい感情で良かった。衣遠は男性キャラでヒロインじゃないし「主人公の超えるべき壁」として描かれているから、彼の心情が言葉にされることはほぼ無いけど、弟に対してかなりこじれた巨大な感情を抱いていますよね?


彼は「才能」がある人間を好んでいて、「遊星への才能の期待が失望に変わったので今の辛辣な態度になった」と最初はストレートにそう解釈してたけど、「衣遠兄様の華麗なる一日」を見ると感情がこじれてるんだな…と。もしも遊星が「妹」だったらコレ結構違うルート辿っていますよね?
もともと遊星の母親に特別な感情(愛とか恋とか侮蔑とか種類はわからないけど巨大な感情)を抱いてて、なまじ遊星が母親に生き写しで…。遊星に対して辛辣な態度を取っているけどあそこまで干渉しているならそれは一種の愛なのでは。嫌悪じゃないと思うんだよね、そうだったら関わろうともしない。

 

柳ヶ瀬 湊(やながせ みなと)

仰天チェンジ幼馴染庶民派お嬢様。
湊は「恋する乙女はうざい」と言ってたけど、私はそうは思わなかった。かわいいと思う。 ともすれば恋愛脳と揶揄されそうな湊の性質をうま~く魅力に昇華していた。 そう、湊は魅力的な女の子なんだけどシナリオはウ~ン。中盤まではいいんだけど後半が「ライターさんイヤなことでもあったのか?!!」と言っちゃうくらい展開が雑。メイド喫茶成功でやったね♪、ってそんな…急にご都合主義オンパレードでメチャクチャ雑に片づけた感じが…。というか本来の目的からズレて恋に走る遊星で湊はいいのか?それって「湊が好きになった遊星」なのかな~。
湊は遊星のために服飾を勉強してたワケで、彼女にとって「服飾」は手段であって目的ではない。だから彼女のシナリオは、つりおつのテーマである「服飾」がほぼ関係ない。あと共通√序盤で男バレしているからそっちのドキドキも無い。そういうのもあってフツーの純愛としては良いんだろうけど、シナリオ的にはあんま面白くなかったですね。

 

かましかわいい湊(ほめてる)のキャラクターと、七愛の哲学は良かった。というか恋愛うんぬんより湊と七愛の関係のほうが読みごたえがあった。湊に傾倒している七愛だけど、出会ったときから信仰しているのではなく色々な要因が重なった結果湊を認めてるってのが面白い関係だ。でも主従うんぬん尊敬うんぬん通り越して恋情みたいなお慕いかたは笑っちゃった。悪化…いや進化しちゃってるじゃん。
で、わたしは七愛が好みの女なので攻略したかった。ふわふわ小動物系の繊細な容姿とは裏腹な毒舌トゲまみれ文学少女いいじゃん、好きです。でも「湊の初恋の男」を奪うために七愛が行動するとは思えないので√は後日談だろうがFDだろうが無いよなあ…。というか遊星を好きになる七愛が想像つかない、でも見たい、矛盾。

 

花之宮 瑞穂(はなのみや みずほ)

男嫌いドルオタ大和撫子箱入りお嬢様。
男嫌いヒロインなので「女装主人公」という属性がぞんぶんに展開されるルート…だけどそんな読み応えなかった…、なんでだろ。男バレするまで物事がポンポンうまくいくからかな?性別がバレたときに「ホントは男でも朝日が好き好きチュッ」とすぐに物事がウマくいくワケもなく、食事ものどを通らないぐらい瑞穂が精神的ショックを受けたのは納得するし最終的に「たとえ男でも今まで朝日と過ごして楽しかった時間は変わらない」なハッピーエンドはオーソドックスで悪くない、だけどフツーに読んでしまった。なんていうかフツーに面白い、って感じで悪くはないけどとりたてて良くもないというか…。

 

こう書くとわたしが瑞穂あまり好きじゃないみたいだけど瑞穂すきだよ。おしとやかお嬢様枠すき、でもよく考えたら私の好きなお嬢様枠って「夢幻廻廊」の裕美子さまみたいなタイプなので瑞穂はちょっとストライクゾーンから30度くらいズレているのか…。朝日アイドル計画のためにメイクをさせるシーンはかわいくてお気に入り。

和とアイドル衣装といえばこれとかこれとかこれを思いだした。

 

ユルシュール=フルール=ジャンメール


トンチキ日本語ノーブル金髪碧眼お嬢様。
ユーシェのシナリオは2番目に好き。湊と瑞穂のシナリオを読んで「悪くはないけどウウウウ~ン」という気持ちを抱いてたら、ユーシェ√は服飾と才能がガッツリ絡んだシナリオでコレだよコレ!。
気位が高いけどちょっとぽんこつな部分が愛嬌になっているユーシェ。そんな彼女がじつは影で血のにじむような努力をしていたのをきっかけに、ルート開始早々に「女装バレして夜な夜な一緒にデザインの勉強会をやる」、というのが面白い導入。ちょっとぽんこつな部分があるとはいえスマートな彼女が泥臭く挫折と努力を積み重ね、最終的にルナ様に勝利するのはすなおに「良かったね」と思った。ユーシェのデザインの力だけではなく遊星が切り札として用意してたエーデルワイスが勝利のキーになったのは、この二人が努力が結果という形に結びついたようで嬉しい。主従としての物語はルナ様√に軍配が上がるけど、いっしょに成長していく対等な関係としてはユーシェルートが良いな。


それと彼女の特徴的な「~ですわ」的テンプレお嬢様口調。その特徴的な口調がこのルートでは変化する、ふつうの丁寧な敬語に修正しようとしているから。これがスゴいかわいかった。ユーシェは感情的で表情豊か、そんな彼女がたどたどしく言葉をつむいであふれでる思いを表現するのが良い。すくない言葉なのにとても雄弁、良い。


あと、ルナ様にも秘密にしていた女装を明かしてくれた優越感があるとはいえ「性別を偽っていたことをわりとスムーズに受け入れてくれたのは従者がサーシャだから」というのはウマいな、と思った。サーシャといえば落ち込んだユーシェを励ますために故郷の味に近いお菓子を探しにいくシーンがあったけどそこすき。サーシャとユーシェのあいだには主人と従者という積み重ねた時間や関係があり、そこは他の誰も勝てない部分というのが感じられるから。つりおつはヒロイン以外のサブもスゴく良いキャラだ。

 

桜小路 ルナ(さくらこうじ ルナ)

ルナお嬢様、というかご主人様。明言されてないけどアルビノだよね。
シナリオ的に1番すき。つりおつをプレイする前から「ルナ様ってキャラが良いらしい」というのは耳にしていたけどいざプレイしてみると、なるほど確かにこれは強い。

 

サディスティックだけど従者への愛があふれている。朝日はマゾではない…いやマ…、というのは置いときつつ、SM関係は互いの愛が重要でご主人様といっても虐げられる側への愛を忘れてはいけないうんたらかんたらを昔聞いた覚えがあるけど、ルナ様と朝日はそういう感じだった。ルナ様には朝日しかいないし、朝日にはルナ様しかいない…、そういう運命力がひたすら強い。おたがいがおたがいを高めている。誠実さと甲斐甲斐しさと従順さをかねそろえた朝日だからこそ、ルナ様をひとりにせず、ずっと一緒にいることが出来たんだろうな。

 

ルナ様はカテゴライズするなら「クーデレ・ご主人様・ドS」なんだろうけど、ご主人様以外はそういうカテゴリーに当てはまらない気がする。あえて当てはめるなら「気高い」。ルナ様も人間なので弱ることはあるけれど、徹頭徹尾「誇り高さ」を曲げることのないお人でコレは人気が出るわ…。
終盤まで女装がバレないので「自分はノーマルだと思っていたけれど同性を好きになるタイプなのでは?」とルナ様が悩むシーン。最終的に性別を通りこした魂の主従を見せられてコレはもう負けたわ、いや戦っていたわけではないけれど、本来わたしのストライクゾーン範囲外のタイプのお方がここまで胸をズキュンズキュン撃ちぬくんだからコレはもう負けた。