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「灰鷹のサイケデリカ」の感想・レビュー

 

さきに言うと、わたしと相性の悪い作品だった。
ハッキリしたネタバレは無いけど、「物語」の輪郭がわかる程度に話している感想です。

 
黒蝶は荒い部分が多いけれどそのぶん瞬間最大風速が強烈で、「このシーンをやりたかったんだろうな」ってのをビシビシ感じる物語。なので「好きな人はすごい好き!」って評価に納得する作品だった。
一方、灰鷹。黒蝶に比べて劣っているワケではなく、むしろ黒蝶で出来なかったことをやっていて物語のスケールを大きくして「もうひとつのサイケデリカ」としての完成度を高めてはいるし、乙女ゲーにしては挑戦的な要素も多いんだけど、黒蝶にはあったピーキーな魅力がそぎおとされていたように感じた。

 

あと恋愛アドベンチャーの「恋愛」部分がすごく足をひっぱっている。商業的な体裁を整えるために「恋愛」を入れておくアドベンチャー美少女ゲーム界隈ではよくある(特にアダルトゲーム界隈)し、そういう手法はわたしは好き。
でもこの作品の「恋愛」はそういうのではなく、むしろひとりのキャラとの恋愛が本軸に関わっているから、複数人と恋する恋愛アドベンチャーのジャマをしてるな‥‥と思った。一言でいうとルーガスゲームです、パッケージもそうだね。
黒蝶も「某キャラルートは乙女ゲーじゃないな」、と思ったけどそれ以外はちゃんと恋愛要素のあるアドベンチャーだったんだよね。「恋愛」を通して、個別エンディングそれぞれに魅力があった。IFに魅力があった。
灰鷹は複数人と恋愛するアドベンチャーの意味があまり無いように思えちゃったよ。個別エンディングの印象がほとんどない。

 

そしてマップシステム。これは厄介だった。その理由はふたつある。
ひとつめは、作業感が強い。物語を読み進めるためには町の人間と会話してポイントを集めなければいけなく、これがかなりめんどかった。「ふたつの一族が支配する街」を描くために住人との会話も入れたのかな、とは思うけどめんどい。
ふたつめに、物語の没入感がそがれる。「物語がガラッと動き出したな!」と思ったらマップシステムに突入するのはちょっと萎えちゃったので‥‥。たとえるなら、ノリノリでYOUTUBEを見てたら途中でCM入る、みたいな。

 

人物が舞台を動かすのではなく、舞台に人物が振り回されている物語。少女エンドは例外だけど大筋だいたいそんな感じ。
「サイケデリカ」と冠しているなら明るい話ではないのはわかっていたし、ほろびゆく美学は好きだけど、この物語では負のご都合主義と感じてしまう展開が多かった。ハッピーだらけのご都合主義はあんま好きじゃないけど、逆もそこまで好きじゃない。というか、第三者から「バッドエンド」と評されてしまうエンディングや展開でも、登場人物が自分の意志で選んだなら共感はできなくても理解はできる。ただ、この作品の登場人物は大きな流れみたいなものにあらがえず、物事がだいたい悪い方向に流れてる。それを唯一ねじまげたのが少女エンドで、ホントの意味で「ヒーロー」なのはルーガスだけなんですよね。ルーガスは魅力的な男だけど、私的には主人公である「ジェド(エアル)」が勝ちとる運命を見たかった。

要するに、この作品と自分は相性悪かったんだろうな。

 

寂寥した雪の世界、ふたつの一族、赤い目の魔女など、世界観は好み。
結賀さとるさんのグラフィックは黒蝶でも大好きだったけど、こっちではさらにパワーアップして魅力的に。クリームがかった白やグレー、彩度の低い色調が物語にぴたりと合っている。動きを感じる絵で、キャラクターが生き生きとしている。絵がうまい。民族調のBGMもすばらしい。素材はメチャメチャ良いんだよな。
好みが一致しなかったのもあるけど、やっぱパワーがいまひとつ足りないように思える。キャラの魅力を強化する恋愛要素にしても、物語としての強さも、どっちも消化不良に思えてしまったよ。ウ~ン。