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闇鍋

恋愛ADV(エロゲ・ボブゲ・乙女ゲ)の長文感想置き場

「フェアリーテイル・レクイエム」の感想・レビュー

男性向き-成人

 Getchu.com:概要

わりとネタバレ

 

鮮やかなグラフィックと抒情的な文章で彩られる大人のおとぎ話。
大石さんとライアーとアリスといえば『Forest』を思い出した、実際は全然ちがう話だよ。でもこっちのアリスも可愛い。

 

自分はダークなおとぎ話が好きなので、その時点で最低80点は確定。予想通り、好みの話だった。バッドエンドも味があって印象的なものが多い。というかシナリオのほとんどが本人たちはハッピーだけど第三者から見たらバッド、要するにメリーバッドエンドだらけ。各ルートは童話の再演だから大筋は予想できるかと思いきやそんなことも無く、飽きずにだれずにキッチリまとまってて良かった。
そしてヒロインのルートを全員見たあとに真相ルートに当たるレクイエムルートが開放される。このルートで伏線を全部回収するので『レクイエム』というタイトルを回収して、きれいに終わっている。まあ多少は謎は残っているんだけど、それはFDで回収されているようなのでそっちで期待。ふたりの関係がとても気になる。

 

なんといっても本作は雰囲気が魅力的。
おとぎ話のベールとかわいらしい少女たちで緩和されているけれど一皮めくれば悪意が蔓延。エロシーンも和姦よりも凌辱が多いのがそれらを物語っている。
身も蓋もない言い方をしてしまえば『ルーピーな女の子たちを幻想の世界にひたらせながら性的搾取をする施設』って舞台なのでまあ胸糞。そのリアリスティックというか露悪的なさまと、甘美なメルヘンというアンバランスさが好みすぎた。

そして雰囲気づくりに買っているのは大石さんのグラフィック、これがもう蠱惑的で幻想的でこのかたが担当してなかったら『フェアリーテイル・レクイエム』は違う雰囲気になったんじゃないでしょうか。モブのコラージュ立ち絵やメルヘンなUIも独自性を高めていたよ。

 

シナリオとしてはミクロな視点、個人の物語なので大作ではない。
だけど少年少女たちが大人(現実)になるまでのおとぎ話なので、読後感がさわやか。その後の彼らが気になったけれど、これは「フェアリーテイル・レクイエム」なのでメインはあくまで『おとぎ話が終わるまで』なのかな。
真相ルートバッドも手を抜かず、もうひとつの「フェアリーテイル・レクイエム」で味がある。レクイエムは歌わないけど、享楽的な生活に反比例するかのように色濃い『いつか必ず来るほろび』も味なもんだね。

「つみびとはだれ?」という推理要素があるけど、それはオマケレベル。さっきも言ったけどメインは少年少女の成長物語。ちなみにつみびとは初回で当てられた、あきらかに一人怪しかったよ。
エロを推してはいないけどエロ無しだとこの雰囲気は成立しなさそうなので、エロゲーならではという作品で良かった。

 


そんなかんじで面白い作品だけどライアーはシステムをそろそろ変えないのだろうか。バックログまとめて見れなかったり、バックグラウンドで作動できないのはわりと不便なんだ…。

あとイケノさんはボイスが欲しかったな、彼の役割的にもボイスがあったほうが映えるキャラだと思うし。

「例えばね、アリスにとっての僕は、チェシャ猫で帽子屋でヤマネで三月うさぎ――あの子には色々必要だから。」

初対面のこのセリフにはグッときた。彼は大人だけど幻想に浸っていて、子供たちへの対応が善意だからこそ真相ルートバッドは胸が痛い。衣装も彼が喜々として準備していたんだろうなあ、と思うと色々想像がふくらむ。下着は施設側の指定だと思うけどね、ゲルダの下着見たらさすがに悪意に気づくでしょ。
よく考えたら、各ルートはイケノの誘導があってハッピーエンド(?)になってるんだね。まさに名脇役。

 

それにしても大石さんのグラフィックは本当に良かった。エロというよりは美しい、いやちゃんとエロいシーンもあるんだけど雰囲気がありすぎてエロい!という感情に繋がらなかった(個人的に)。でもゲルダの診察はエロかった、シチュエーション的な意味も含めて。

 

あとはキャラ感想。

 

 

アリス

萌花さんの歌うようなボイスとレトリックの効いたセリフが聞いててここちよい。
アリスはメチャクチャな女の子だけど、行動には好奇心と善意がつまっている。だからか狂気的なキャラなのに、それをあまり感じさせず不快感も無いのはスゴい。ゲルダ庭師の男たちもそれに触れてたしね。

 

恋は落ちるもので愛は溺れるものという会話からの、『これが、あたしが「恋に落ちた」重みよ!』はみごと。
『フェアリーテイル・レクイエム』にメインヒロインはゲルダ?なのかな。個人的には前述のイベントがとても印象的なのでアリスが思いついてしまう。花火もドーンと咲いて、ひときわ華やかで幸せなイベント。でもこのエンドはアリスの幸せな狂気が感染して根本的な問題は何も解決しないメリバなんだよね。というか夢の世界だからいいのか?。
アリスの物語だけは他の女の子と違って、男役がいない。ハッピーエンドはその聖書を書き換えて、施設の大人たちも変えて、それがアリスのすごいところ。真相エンドもいいけれど、このメリバも十分魅力的だった。

そして聖書ではなく手を握ると、そのまま無し崩れックスのあとにモブにNTRれまくるバッド。ハッピーエンドよりこっちのほうがエロティックなのが皮肉だなあ、と思った。

 

グレーテル

コミヤというキモモブが色んな意味で大活躍ルート。コミヤのことがやけに印象に残ってる、グレーテルも印象に残ってるよごめんな。

舌足らずな口調も伏線だったのはちょっとびっくり。結局兄弟という枷を自分たちで外してしまい、青い鳥のチルチルとミチルへ。健全な兄弟ではいられなかったのね。兄弟ネタ好きなんだけどグレーテルはそこまでドンピシャじゃなかった、不思議。
バッドエンドのコミヤを燃やすグレーテルの後ろ姿、その美しい凄惨さといったら。普段のマスコット的なグレーテルよりもこっちの狂気的なほうが好みかもしれない。どっちも好きだけどね。

 

ラプンツェル

あなたという呼び方が好き。全体的に文学的な言い回しが多い。

主人公は性的なものにすこしばかり潔癖な少年。誠実というよりは少年らしい。下着姿のラプンツェルと一緒に寝ることになっても、ちゃんと誠実な男でいようと心がけたり、グレーテルと媚薬を使われてもちゃんと兄弟の一線を超えないように心がけてた(結局超えたけど)もんね。自制心が強いというかはヘタレ?
ラプンツェルはアダルティで妖艶だけど、そんな彼女とプラトニックな添い寝をするイベントは悶えた。そういう落差はドンピシャ。

あとラプンツェルの告白シーン。ことばのひとつひとつが宝石みたいに煌いて美しい。ラプンツェルルートは抒情的な言い回しが多くてロマンチック。好き。

 

いまさら気づいたけど、真実と向き合わせるとバッドエンドになるんだね。あとどのルートも必ずヒロインの誰かが死んでいる。このルートではグレーテル。

真実から遠ざけると、主人公は黒いイバラで失明して生存。まさにラプンツェルという物語そのものに。ハッピーエンドになるけど、腹はそのままだしずっと生まれない子供と幸せな日々をおくるんだなあ。
ラプンツェルは楽園のおかしさを自覚しているけど、それを了承したうえで物語にとろけることを選んでしまう。主人公への愛の献身のために。THEメリーバッドエンド。

 

オデット・オディール

正反対のふたり、かわしまさんの演技が見事。
『オデットは妖精じみた見た目とは裏腹にしたたかっぽい?』と予想してたけど違った。ふたりともやけに剛力なのは笑った。

パーティで間違えてオディールを選べば、それはもう物語の再演。誓いのあとにオデットと心中未遂をしてオディールの激情に惚れ、破滅の道へ。結局オデットが淫売だったのではなく、オディールが途中から入れ替わってたってことか。
オデットが無垢すぎてオディールがこじらせすぎてる…。姉に対してサディスティックなのに誰よりも愛しているとか正直だいすき。個人ルートでオデットのプッシュが少ないので「つみびと」なんじゃないかと思ったけど当たってた。「楽園」脱出後は苦難が待ち構えているけど、オディールの存在があるならすこしばかり安心。

オディールが死亡した後は眠りと穏やかな淫蕩な生活に転げおちるバッド。なにも考えないのが一番しあわせだからね。 

 

ゲルダ

フェアリーテイル症候群を自覚している少女。クールに見えるけど激情家。
カイに会うという焦燥につきうごかされて、あんなに拒んでいたゲルダを演じてみせるのが個人ルート。そして主人公はガラスに映ったもうひとりの凶暴な自分にゆらされて、心無い少年になって、ゲルダはカイを探して…って雪の女王まんまの再演だね。

ゲルダは『ゲルダ』であることを放棄すると、「永遠の答え」に「死」を彷彿させてしまい、雪の女王になってしまう。反対にゲルダであることを享受して受け入れれば、幸せな日々に。真相ルートでもウェンディであることを享受すれば、かりそめの幸せにひたることができる。
主人公のために「楽園」に来たとかメチャクチャ情熱的で献身的。主人公に会いたい、という願いだけでフェアリーテイル症候群を説き伏せてたんだよね。メインヒロインはゲルダなのかな?そしてエロルートが無いので「あれ?」と思ったら真相ルートなのね。現実世界で性的関係を結んだのはゲルダだけってことで、やっぱメインヒロインかな。