闇鍋

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「Vermilion -BIND OF BLOOD-」の感想・レビュー

Vermilion -Bind of Blood公式

 

北アメリカ西部にある「鎖輪(ディアスポラ)」というコミュニティ(町)を舞台にした、人間社会に巣くう「縛血者」たち(+ハンター)の群像劇。
人間vs吸血鬼vs吸血鬼なエンタメというよりは、吸血鬼(理想・特別)へのアンチテーゼと人間賛歌(現実は最高)なメッセージ性が強いシナリオ。
硬派な作風ながら要所にいる美少女キャラが話をやわらかくしていて、思ったより読みやすかった。

 

ルビ多用のテキストはかなりクセがあって、端的に言えば中二。
盛り上がりにうまく調和しているときと、くどさに冷めるときがあり、まさに諸刃の剣。
しゃれた言い回しが多くて結構すきだったけど、戦闘中に自分の能力のうんちくするのは大丈夫なのか?と思う。戦略よりも美しさを重視してるんだろうな。

 

いつもならキャラ感想以外はしまわないで記事にしてるけど、概要を説明するうえでややネタバレキャラのことをどうしても書いてしまうから、あとはしまっておきます。

 

 

シナリオは、4人のヒロインのルート+グランドルート(真エンド)で構成されている。
ヒロインルートはトシローとヒロインの恋愛物語としてはきれいに終わってるけど、核の問題は解決しておらず伏線もかなり残ってモヤモヤするところが多い。
謎が残っている順は、シェリル〉アンヌ〉ニナ〉アリヤ。

 

あくまでメインはグランドルートで、ヒロインのルートは一種の踏み台に見えるのがネックかな。
グランドルートは「吸血鬼など何処にもいない」にうまく繋がるスッキリとしたエンドだったけど、メッセージ姓の押し付けがやや強固。
ワンパターンとも言える戦闘演出もあってか思想を語るシーンは冗長に感じてしまった。

個性的なサブキャラが多いけど、個々での見せ場はあってもキャラ同士の交流があんまなかったのは残念。
それとせっかくの異能力モノなのに、ほとんど能力を発揮してないキャラが多いんだよなー。

 

 

そしてクリアして一番印象に残ってることいえば……アイザックだよ。
本作をコンプした人全員の頭にこびりつくでしょアイザック
どこまでもポジティブな妄執を貫き通した男。

ほかのヒロインたちが1キャラ1ルートなのに比べて、アイザックは各ヒロインルートで見せ場を必ず作ってるし(アンヌルート終盤なんてアンヌ置いてヒロインだったわ)グランドルートは美影ルート兼アイザックルートで、実質5ルートかけてトシローとアイザックの関係を眺めてるから真ヒロインになってしまっている。
こういうキャラはホモとか揶揄してしまうんだけどアイザックは程度をこえてなんか別のもんになってるわ。

ほかのヒロインはトシローがいなくてもほかのなにかで自立して大丈夫だけど、アイザックはトシローじゃないと絶対ダメだからそりゃもうなあ。

 

 

システムは一通り揃ってるけど、戦闘シーンの多さがエフェクトやカットインの多さにつながっていて、全体的に動作が重い。
ふきだしのセリフウインドウも重さの原因かな?
なのでパソコンによっては、強制終了に気を付けたほうがいいかも。

エロはトシローとの和姦中心、ほぼ数クリックで終わる添え物。
アリヤルートとシェリル以外はあってもなくてもどっちでもって感じ。

 

骨太な作品ながらテンポの良い展開で一気に読み終えられた。
伏線はグランドルートで全て回収したし、よい気分で終えられる。
吸血鬼モノとしても良く出来ていて、おもしろかったです。

 

アンヌ

77日間のあいだに親(バイロン)を殺せば元の人間にもどれる!という事と、「無かったことにはしない」がキーのルート。

 

自分が虐げられるのは構わないけれど弟が汚されるのは許さない、という芯の強さを感じさせた「VSケイティ戦」。
そして、吸血鬼であるトシローと人間に戻ったアンヌは一緒にはいられないけれど、彼女の最期には再会できる情緒のあるエンド。それらはよかった。


だけど、いかんせんアイザックインパクトのせいでアンヌの印象が薄い。
アイザックの死と引き換えにトシローがタブー回避の心臓入手イベントは、完全にアイザックがヒロインじゃないか……アンヌ………と思ってしまった。

 

「吸血鬼(ヴァンパイア)など、何処にもいない」


超越者(ヴァンパイア)は、俺たちだけでいい

 

しかもこの展開、人間と同じように受け継ぐことが一種の不死という本作のキーである人間賛歌の要素も継いでるじゃん。さすがヒロインだなアイザック。アンヌ…。

アンヌも悪い子じゃないというかむしろ良い子だからこそ、クセモノ揃いの本作でピーキーな魅力に乏しいというか。
あと、ケイトリンとの友情のゆくえや「伯爵」のこととか、アンヌルートは色々未消化だからなあ。

 

  • トシローはアンヌへ救えなかった過去の女や自分を投影している。
  • そして優しい男だからこそアンヌに対して、「優しい」対応を取り続ける。
  • 情けの延長で情事をおこなったが、いずれ死ぬものと自身を考えているトシローはアンヌの気持ちにこたえられない。

そんなトシローとの関係も、アンヌ→トシローは良い終着だったけれど、トシロー→アンヌは過去の恋人を投影していて結局アンヌは美影を超えることはできてないじゃないかな。

 

アイザックとグランドルートのわり食ってる感が強いけど、終盤の「アイザック+ケイトリン+トシローVS暴走パイロン」は良かったなあ。このルートのみだし。
人気投票は…アンヌどんまい…。


シェリル

勝ち気なお姉さん。19世紀末にスラムで盗人をして生計をたてていたが、パイロンによって吸血鬼にされる。トシローと長い相棒生活をおくっていたが今の関係を壊したくないのでお互いの過去にはふれずに過ごしてきた。

シェリル殺害(ケイトリンのトリックスターで生存してるけど)をねじれて伝えられたトシローは、アイザックの甘言により三本指として復活して暴走。
ニナVSトシローは良かったね。
シェリルの影の能力でトシローの心臓を治療していたけど、コレは結構力業な展開だったから、あんまりしっくりきてない。
だったらもっと早くからイケたのでは?って思っちゃって。
最終的にふたりの愛のパワーでバイロン倒して逃避行エンドだけど、偽三本指とかいろんなことが謎で終わっちまった。


そんなかんじで、シェリルルートもいろんなことが未消化。
トシローとの関係をボニー&クライドに例えてそれは不吉だからダメだわ的なシーンが本編であったけど、シェリルルートはまさしくボニー&クライドになりそうなエンド…。
そしてラストはまたアイザックが半分ぐらい持ってたわ。
まあ「お姫様」のようなヒロイン然とした美影ではなく、自分で自分が立つ力を持つ「お姫様」にはなりきれないシェリルなら、これからトシローとなんとかいけるんじゃないですかね。

 

ニナ

即堕ち純白気高いお嬢様。シェリルルートのラストで導いてくれたギャラハッドの性質や、ゴドリフの忠義が良い味だしてたルート。

三本指の偽物の模倣犯のせいでアンヌは家を焼かれるし、アリヤもトシローによって殺されるし割りと酷な展開。
でもアンヌは最後にパパに会えるから、まだ救いがある。


 

ゴドリフが良かったなあこのルート。
利害だけを考える無情な男に見えて、じつは彼なりに鎖輪とニナを守ろうとしてたんだね。グランドルートでもその端が見えた。

ゴドリフの考えでは、三本指の犠牲だけでは権力者は満足できずニナも生贄にされるはずだった、そこに自分の命を代わりに加えることで自分なりにニナを救おうとしていたクーッ。
冷たく、けだかく、忠義に生きた男だった。
あと先代の愛娘を守ろうとした従者とかそういう設定がメチャ好きなんですよね、ダンデビのローエンルートみたいに。

 

アリヤとニナ、そしてバイロンとニナを対比してた。
前者は、不釣り合いともいえる輝かしい飾りのために虚飾の仮面をやわい部分にかぶせ、血の繋がりという美しい関係を追うところが。
後者は、同じ吸血鬼の親を持ち、親を慕い、親に裏切られるところが。


あと、またアイザック終盤大暴れ。
Vermilionは全てのルートでメイン並みに活躍するアイザックの輝きを見るためのエロゲだった…?

かつての親友を倒してでも、死の淵にたたずんでも、忠義に生きたい。
狂気ともいえるほど純な望みは、冥府の男「伯爵」のほうびを受け取ったトシロー。

「ああ、そうだニナ――――俺は、君のために、死んでいい。
君のために、死にたいのだ」

誰かを救うものになりたかった。それに気づき、いつか必ず名君になるであろうニナの一歩。
心の美影に別れを告げて、ニナへの忠義のために生きることを決意するトシロー。

とにかく主従が推されていたわ。
好みだったけれど、グランドルートでゴドフリの言葉と父の裏切りイベントだけで真の主になって大丈夫になったわ展開は笑った。こっちでしっかりやってたのは何だったんだ。

 

アリヤ

「白木の杭(ホワイト・パイル)」こと、ドス声女子学生ヴァンパイアハンター
血なまぐさい復讐に燃えているけどネコは好きっていうギャップジャパニーズ。


他ルートからトシローにやたら執着するから一種の愛なのでは?と思ってたら、愛と憎悪は表裏一体とかそういう話だった。
ニナルートの分岐ルートで、こっちだと生存して覚醒。
自分を覚醒してくれた張本人であり、トシローがこっち側(人間側)に近いと気づき認めたからこそ恋する乙女に。


アンヌ、ゴドフリ、アイザックなどキャラがかなり死ぬルート。
「伯爵」は『縛血者』という種族を滅しようとしていて、縛血者の魂を食って強化される能力を持っているから、アリヤのような吸血鬼殺しは仲間みたいなもん。
間接的に吸血鬼ボスの「伯爵」を助けていたことが判明してショックだけど、最終的にトシローと共に「伯爵」を滅するためにがんばる話。
アリアの劇薬のおかげで銀の心臓が回避されたわサンキュー。フェラもサンキュー。
トシローはちゃんと躊躇するのが大人だね。
今までエロは別になくても良いのでは(特にアンヌ)と思ってたけど、このエロはあってよかったわ。

 


トシロー教信仰者のアイザックに勝てるのは同じく狂信者のアリヤしかいないということで、アイザックにキャラを食われず、アリヤの愛憎入り交じった感情のパワーもあるから、ヒロインルートのなかでは一番おもしろかった。

 

「添い遂げるのは――――この俺だッ!」

「乙女の初恋、見くびるなァッ――――!」

 

伏線もグランドルート以外で一番回収されてたし、ラストスチルの成長アリヤがかわいかったなあ。クラウスも良かった。
絶体絶命のトシローとアリアの奇妙な関係がサイコーだった。

 

グランドルート

真エンドですね。このルートが一番メッセージ性が強い。
「縛血者」の始祖であるリリスと、棺の娘たちと「伯爵」の謎を全部回収するルート。

最強の「吸血鬼」という記号である「伯爵」とのラストバトル、美影の魂をつぐ棺の娘のスカーレット。そしてラストバトルでナチュラルにイメージ世界にいるアイザック。メインヒロインの美影とアナザーヒロインのアイザックが揃ったな!って思ってしまった。
それにしてもアイザック、「伯爵」の空虚さを指摘してトシロー最高!をアピールする大物だったとはな。

 

 

 『理想と現実がずれたときに、ヒトは超越者(ヴァンパイア)に成りたがる。

強大な力を持った何かに成ることで、今の自分を誤魔化しながら捨てたがる。
陶酔すれば、大半の血族と同じになるだろう。
だが俺は、潔癖である故に粗を探して、これは違うと受け入れられず――』

IFはいくらでもあるけれど戻れるわけがないし、その過去がなかったら今の自分は存在しない。
全てに意味があった、だから今の自分サイコー人間賛歌って感じですね。

「人間にもどった」のではなく「人間になった」ことで、「裏切られても友人を救いたい」という愚弄でありながら尊い願いを成就させようとするアンヌはスゴいよかったな、上記のテーマを踏んでいて。
でもキャラクター的には弱いんだよね…。

 

生きたい!って思ったトシローが死んでしまうエンドは寂しいけれど、明日を生きる人間のアンヌ・ケイティ・アリヤと、太陽がタブーで見れなかったシェリルが人間になったことで明日をむかえられるってラストはきれいだったから後味は良かったわ。