闇鍋

恋愛ADV(エロゲ・ボブゲ・乙女ゲ)の長文感想置き場

ハピメアの内藤兄妹におちるとは思っていなかった

「そして今日も俺は夢を見る――」が開始の合図の甘くて悪い夢の話ハピメア


夢ばっかり見てないで現実と向き合おう!的テーマは古今東西のフィクションで扱われるが、そのさきに切りこんで夢を肯定的に受け入れた作品はまれだ。
FDの「覚めない夢はない、けれど夢を見なくなる日はこない。」は、ハピメアの核心を適切につきながらもネタバレはしていないベストキャッチコピー。

つづきはネタバレ。わりと長い。

 

印象に残ったのは内藤透内藤舞亜

後者の読み方は「マイア」、悪夢をもじったのかな。


この二人は主人公とヒロイン、兄と妹、生者と死者、現実と夢。そういう関係だ。
そもそも「ハピメア」は童話と明晰夢をテーマにした作品。 

 

主人公の透は、幼少期に森ではぐれたきりの妹の喪失を認めずに、理想の夢の世界に溺れた。
そこで、幼馴染で透たちと仲がよかった少女・咲が「妹」を演じることで、やっと現実の世界で生きるようになる。

 

透の初期設定を簡易的にまとめた。
とんだシスコンになってしまったし事実そのとおりなのだが、それは置いといて、結果的に透は副産物として明晰夢を見るようになる。

 

ときは流れ、学生生活を過ごしていた透の夢に、突然舞亜が登場する。
同学校の女子生徒、咲・弥生・景子を巻きこみながら、夢が現実を侵食していく事件が発生。
そして彼女たちは、左から順に偽妹・ハーフ先輩・理事長の娘というスペックで、そろいもそろって美少女。
もちろん3人とのエンディングも存在するが、彼女たちのルートは「有栖」ルートのための布石になっている。(意見が拮抗しそうな点だ。)

 

有栖とはパッケージ絵でわかる通り、重要なポジションのキャラクターだ。
そして透たちとは現実世界で唯一面識のない少女。
なんとなく、まあ、お察しのとおり彼女は夢の世界の住人だ。
正確には有子という少女の、夢の世界での代理主人公をつとめている。

 

舞亜の話に戻る。

彼女は現実世界ではとっくのとうに行方不明。
死体は見つかっていないが、どう考えても他界している。
作中で登場する舞亜は、透が「舞亜がもしも生きて成長していたら」という彼女への未練から生まれたものである。
イマジナリーフレンドではなく、有栖の件を考えると独立した意志を持った存在。

 

舞亜は、透たちの弱い部分をつく言動や行動を繰り返す。
それに加え、彼女は聡いのだが兄の困った顔が好きというクセのある〇学生だった。
なので敵なのか味方なのか、プレイヤーはやきもきされる。


しかし物語の核心にせまると、彼女は「何度もくりかえされる夢」つまり「透が有子の存在に気づいて忘れさせられる夢」「透が有栖以外のヒロインと相思相愛になる夢」を見届けていたことが判明する。

 

「……そう。舞亜ちゃんは、兄さんの目を通して今までの事を見ているのね?」
「うん、きっとそう。わたしに見えるのはほとんどがそんな世界――うん、そうなんだわ」
「……わたしが見ているものは、わたしだけのものじゃないのよね」

 

(咲ルートから引用)

 

自分が夢の中でしか存在しない、森から決して抜けることはできない儚い死者だと自覚している。
それでも兄が幸せになるためなら、悪役になってもいい。
たとえ彼女が唯一手に入れられるものは、自分を生み出した兄の透だけだとしても。

愉快犯のように見える彼女は、少々ひねくれた手法を使いつつも、兄が自分という夢から決別して現実と向き合うことを望み、何度も兄を見送ったのだ。

 

インタールード3


「けれども、舞亜は本当に意味もなく人を傷つけたりはしない。
それは報復だったり歪んだ愛情だったりはするけれど、大抵の場合は何か理由がある。」

 

舞亜の行動は、ゆがまない。
途中で感情が入り混じったとしても、ゴール地点は変わらない。

 

しかし透が有栖を選んだ場合は話は別だ
なぜなら透がこんな夢を見るようになったのは、有栖の創造主である有子の夢が原因だから。

だが、透は幼い頃に病院で出会っただけの有子を救おうとする。
たとえ思い慕った有栖が消滅してしまうとしても、「夢に溺れることは間違っている」
それは透が現実で生きて、つちかった倫理でありエゴだ。

 

有栖ルート終盤。

有子を救うため、透は今まで否定していた舞亜の力を借りる。

 

「はいはい、何かしらお兄ちゃん?」

 

このシーンはハピメア一番好きなシーンだ。
咲・弥生・景子ルートは、どれも夢である舞亜を否定し、現実と向き合う折り合いをつけた。
そうすることで、妹というトラウマを払しょくした。

一方舞亜ルートの透は独りよがりな幸せに浸る。
依存は対等な関係ではない。(そこがいいんだけどね。)

 

そして有栖ルート。
夢を享受した透は舞亜と歩むことを決め、有栖のもとへ駆けぬける。
ここで初めて内藤兄妹は、対等に向き合ったと言えよう。

有子にとっての有栖、透にとっての舞亜。(ハピメアは対比が多い。)
彼女たちは独立した意思を持っていても、もとは分身であり自分自身。
舞亜とも別れられるワケがない、死んだことを忘れる訳では無いのだから。

 

「目の前にあるものが現実よ。そういう意味じゃ夢だって現実の一部だわ」

 

弥生の言葉を借りるならば、夢だけの存在である有栖や、夢でだけ生き返る舞亜だって立派な「現実」なのだ。
ラストの有子のオッドアイが、それをものがたっている。

 

有栖の存在を認め、夢の砂の城が崩れさっても、有子のなかにいる有栖を信じる。
それは同時に、透のなかにいる舞亜を肯定することに繋がる。
有栖ルートは有子ルートでありながら、舞亜ルートの側面も持ち合わせていると感じた。

 

そして明晰夢を見る透は、現実世界に戻っても、これまでの夢を覚えている。
幸せな悪夢に添い遂げながら、現実を生きれるぐらい図太くなって。
この透なら、いままで気づかないふりをしてきた咲の気持ちに答えを出すだろう。

そんな感じで

ハピメア内藤兄妹が対等に向き合うまでの話でした。
「妹」への執着を捨てなくてもいいじゃん、夢に傾倒しなければ。
導いた答えがそれなのは衝撃的だし、とても好みだった。

 

咲や弥生も景子に有栖もちろん有子も、全員好きになれた作品だったよ。
みんな現実と理想のギャップに悩んでいて、でも内藤兄妹みたいに、こういう風に夢と現実がいっしょにいてもいいよね?
それもひとつの答えだね。

FDやります。