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恋愛ADV(エロゲ・ボブゲ・乙女ゲ)中心の長文置き場

「それは舞い散る桜のように 完全版」の感想・レビュー

 

無印版は未プレイ。

古い。いや2002年発売なので古いのは当たり前なのだが古い。学園のプリンセス、毎日起こしに来てくれる妹的存在、やたら女の子とエンカウントする主人公、軽薄で顔の良い男友達1名など。羅列した点は美少女ゲームあるあるだけど、それ以外のノリとか設定とか言葉の端々とか、そういうのが「ああ、昔の学園モノってこういう雰囲気だったんだろうな」と思う古さ。「元祖学園恋愛コメディーADV」と銘打っている作品に「古い」と文句を付けるのも見当違いだけど、そう思ってしまったのだからしかたがない。最近のポップカルチャーは80年代のニューウェーブやロマンティックがリバイバルしているらしく、ファッションも昔の流行が再来したりして、古すぎるとかえって新鮮さを感じるものだけど、この作品はそういう「古さ」ではなく鼻についてしまった。なので最初は読むのがキツかった。

 

あと未完。2019年に今作を手にしようと考えている人には周知だろうけど未完です。ファンタジー部分の謎の答えが提示されず、作中で夏を過ぎたあたりから展開が早急になりカップル成立かと思ったら主人公の記憶をヒロインが失いなんやかんやで朝陽をボコって桜香が自身の存在をかけた謎パワーのおかげで記憶が復活してハッピーエンド。力業超展開、それが全ルート共通の金太郎飴。
主人公の正体は匂わせている、というかすぐわかるけどそれ以外の謎が消化不良すぎる。やっぱり、そこは気になってしまったな。

 

原画担当は複数。立ち絵は西又さんだけど、スチルの絵柄が明らかに違うのが何枚かあった。西又さんの絵柄はこの時代のほうが好みかも。でも制服はどうしたんだ、美少女ゲームのブッ飛んだ制服デザインには慣れているつもりだったけど今作は面食らった。そして「食い倒れ人形」と揶揄されているのを知って納得してしまった。そっくりだもんね…。夏の男子制服もびびった、半袖の学ランって襟いらないのでは…というかシャツでいいのでは…。
演出はこの時代の作品にしては凝ってる。この年代の作品そんなにやってないから違うかもしれないけど、目パチするスチル(でも選択が謎、「あ、そのスチルが動くの?」って感じ)や雪が降るエフェクトなど。季節によってヒロインの髪形が変わるのも良い。

あと私のPCは起動にパッチ必要だった。(データベースからタイトル検索してください。)


早々に短所を挙げてしまったけど、長所もある。メインライターが王雀孫さんなだけあってテキストが良い。というかそれ目当てにプレイした。「古さ」に胸焼けしたけどクスリと笑える豊富な語彙のテキストはやっぱり大好き。下ネタやパロディ抜きで、ここまで笑える文章を書けるジャクソンはスゴい。
あと小町というヒロインがとてもカワイイ。押しかけ女房でマイペース、と思わせてかなり繊細。梅雨の相合傘のイベント、舞人の冗談を本気に受け取りけなげに守っていたのがグッと来た。「せんぱい」の呼称や敬語の理由も、なんてことない子供の頃の約束をずっと守っているのがいじらしい。待ち合わせのバーベキュー怪人の件とかよく怒らなかったなあ。舞人にはもったいないぐらいイイ女だと思う。
彼女は俺つばの鳴を成長させた容姿(容姿そっくりなのはこだまだけど)(こだまは猫リュックも持っているので余計に彷彿する)、性格はかなり似ている、言葉のチョイスも似ている、声優さんも一緒。というかライターも一緒で西又絵だから鳴のジェネリックもとい元ネタだと思う。

 

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このシーンは「俺つばに受け継がれてる思想だな~」と思った


主人公の舞人は子供っぽくて突飛。ああ言えばこう言うタイプのガキ臭さが目立ち、厚かましくて無遠慮でメチャクチャな人間だけど、ジャクソンの妙文のおかげか不快ではない。一定のモラルはあるし気弱な面もあるしもある、たんなる奇人でもない。まあ好きでもない、でも面白いヤツ。ボイスには賛否別れるようだけど、自分は気にならなかった。コントのコンビの片割れが喋らない、ってのは寂しいのでコメディがウリの今作にはむしろあって良かった。
あと氷河流さんの名義違いが親友役やってて嬉しい、わたしが好きなので。

 

特筆すべき長所はそのくらい。あとは、昔の王道学園ラブコメときどきファンタジーって感じ。
未完ゆえに味わいは浅く、インスタントに萌え萌え日常を摂取できるという意味では良作だった。わたしはその部分に魅力を感じなかったので特に面白い作品ではなかった。でもテキストは良いので楽しい、ただプレイ後に印象はさほど残らない。小町がカワイイ作品だった。

「鎖 -クサリ-」の感想・レビュー

「精悍なクレイジー犯罪者」VS「少年少女」のシージャックサスペンス凌辱モノ。
Leafさんこんな鬼畜モノも出してたんだね、知らなかった。かわいらしい萌え絵とは裏腹にヒロインは容赦ない目に合う、凌辱モノの冠は伊達じゃない。


音楽・グラフィック・システムは高水準、2005年制作とは思えないほど古さを感じない。声優さんの演技もすばらしい、主人公・ヒロイン・悪役の全キャラがハマり役。悲鳴ってこんなに違いを感じれるんだなあ、と思った。
そして絵も良かった。船内をえがいた背景は重厚で緻密、逆にキャラクターはデフォルメの効いた萌え絵。1ピクセルでも線がズレるだけで絵の印象は変わる、という話を聞いたことがあるけど本作は「萌え絵」のなかでもひときわレベルの高い「萌え絵」だった。なんていうか、かわいらしいキャラクターはより可憐(特に立ち絵!)だし、凄惨なスチルは目をそむけそうになる。一言であらわすと達者な絵。ただ、スチルでたまに岸田さんの顔がインしているのは笑った。やってる行為は非道なのに岸田さんの顔面は色男なのでシュール。


そんな岸田さんが大暴れする本作はデッド・オア・アライブ。難易度が高く、ひとつの選択ミスがゲームオーバーという名の死を招くが、弱い私は初手攻略サイト閲覧。なのでそこは支障なかった。

 

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簡易図解

次に気になった部分。上記が一目瞭然、味方の半分が足を引っぱる。
そして親友の男が最悪。小物で日和見なのはまだいい、そういう面が愛嬌になるキャラもいるから。でも友則は姑息で臆病で、敵の岸田にすぐ寝返るわチャンスとばかりにヒロインを犯すわ、ここまで最悪な親友ポジションも初めてだなあ…と圧倒されちゃったよ。岸田は悪人だけど、おまえ(友則)の行動の免罪符にはならない。恭介への嫉妬など行動に至る理由はあるけど、悪役に徹しれない悲哀はまったく感じなかったし、岸田さんのように尽きぬけた悪役でもないのでコイツは最悪です。友則が悪役ポジションならここまでボコボコに言わないんだけど、中途半端に味方陣営にいるからフラストレーションたまっちゃった。


あと、キャラクターの緊張感の無い会話。友達が岸田によってメチャクチャな目にあっているのに、最中にしろ直後にしろギャグを織りまぜた会話をするのはちょっと空気が違いすぎて気になった。特にモニタールームの部屋。「ウィットに富んだ言葉で深刻な場を和ませる」ならわかるんだけど、そういう文脈ではなく、日常モノの会話を切りとって挟んだみたいで違和感。

 

その2点は引っかかったけど、サスペンスものとしては楽しかった。まあ、あんだけ穴ズコバコされて復活早くないか?逆に堕ちるの早くないか?肉体的に強すぎて精神はか弱くない?などツッこみどころはあるものの、登場人物の感情の揺れうごきに惹かれたのでそこはそんな重要じゃない。
家柄や世間体に倫理、極限状態だからこそ「鎖」から解放される人々、特殊な状況だからこそ成立する関係、そして岸田との駆け引き。この作品は岸田という悪役がヒロインと同じくらい(それ以上?に)魅力的で、それが本作の「面白さ」の一端になっていた。パニックもので悪役の濃さは重要だもんね。

 

ことマルチエンドのアドベンチャーゲームは、分岐や複数のEDによってひとりの人間の様々な側面を汲み取れるメディア。そういう意味でいえば本作は「恵」が優遇されているうえに(他キャラのEDは一人一つなのに恵はEDが四つある)、もっともヒロイン然とした「ヒロイン」だった。

「いくら汚泥にまみれようとも、高潔なる白き輝きは損なわれない。」


「鎖 -クサリ-」の本編、「真実の扉」より引用

最初は明乃がメインヒロインだと思ったんだけど、蓋を開ければ恵が強い。明乃はミスリードのための「ヒロイン」で、真「ヒロイン」は恵、裏「ヒロイン」はちはやだと思った。ちはやも強かったなあ…、最強で最恐の妹。
今作を読了したプレイヤーの9割は恵を「ヒロイン」として支持すると思う。とはいえ、その定義はひとによって異なる。なので『今作は誰がヒロインなのか?』を考えるのも楽しかった。人によっては絶対悪役岸田さんとも解釈できるし、愚鈍を貫く明乃がメタ的にはヒロインともいえるし、兄のために世界を壊す系妹ちはや、役に立たなさでいえば明乃とイイ勝負だけど恭介のために涙をこぼすシーンはヒロイン力最大風速が吹いた可憐、おどけてみせて根底では姉のために行動してた珠美、それこそ前述のとおりストレートに受け取って恵でも。主人公の恭介がヒロインでもいいと思う、性格がメチャクチャ良かった。それにしてもこの数行でヒロインヒロイン言いすぎてゲシュタルト崩壊しちゃうよ。

 

まとめ。 ツッこみどころはあるもののキャラクターの感情に惹かれるサスペンスだった。パニック作品として楽しめる一方で、「誰がヒロインか?」というメタ的視点でも面白い。
私は『「兄のために世界を壊す系妹」か「妹のために世界を壊す系兄」』がいると聞いて今作をプレイしたので、ちはやの存在だけで値段以上の満足感を得た。良かったです。 

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「俺たちに翼はない After Story」の感想・レビュー

 

これは“そのあと”の話だけど
僕らが君に語るのは、たとえばこんなロマンス

 

meka.hatenadiary.jp

 

前作でもあり本編「俺たちに翼はない」をプレイしたのは約2年前。自分でもワケがわからないのだけれど、なぜか去年の秋ごろに再熱してしまいPC版を持っているのにVITA版を入手するわアニメDVDドラマCDキャラソンラジオCD全巻揃えるわファンアート描くわ、笑ってほしいぐらいハマっている。今は鳴の目覚まし時計が欲しいです。スマホのアラームで朝日を浴びるのが主流の現代、10年前の美少女ゲーム系目覚ましを使うの一種のルネサンス閑話休題


本編の感想で「この作品はスルメみたい」と評したけどその通りすぎて笑うしかない。2年前の自分に伝えたい、2年後に狂ったようにハマるよ。その時もおれつばは好きだけどここまでではなかった。2年後に燃えるなんて予想できないよ。いまは熱量と知識が雲泥の差だから書き直したいな、本編感想。特に鳳兄妹の欄。

(本作はFDではなくスピンオフらしいけど便宜上)ファンディスクはよっぽどその作品が好きじゃないと手を出さないもの。積みゲーが大量にある2年前は手を出さなかった(今も積みゲーは多いけど一旦それは置いとく)。「手が空いたらそのうち…」とか思ったらまさかの最熱でやるしかないよね。というワケで読んだ。

それと『俺たちに翼はない』今年10周年おめでとうございます!
やりきってる移植や雀孫の達筆は承知の上で新展開期待しています。なんかやるとしたらイベントかなあ…本当にお願いします…。2019年に好きなコンテンツを追いたい。

 

【2019.03.21.追記】ありがとう

【2019.04.16.追記】チケット取れたので両日行きます。あと、この記事を加筆修正しました。

続きはネタバレ。

 

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