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恋愛ADV(エロゲ・ボブゲ・乙女ゲ)中心の長文置き場

「明治東亰恋伽 Full Moon」の感想・レビュー

架空の明治時代が舞台、現代の女子高生がタイムスリップして史実の偉人と恋愛する物語。タイムリープもの、特に過去に飛ぶ作品は当時の時代考証をどこまで忠実にするのかが肝になると思うんだけど、めいこいは割とガバガバ。鴎外が饅頭茶漬けが好きだとか、鏡花が苛烈な潔癖症だとか、キャラクターに元ネタの個性が反映されているからその時代の雰囲気みたいなものは感じられるけど、風俗とかはけっこうガバガバだと思った。(偉そうなことを言えるほど私は明治時代に詳しくないので、あくまで主観です)「あやかしが出てくる」というファンタジー要素がある時点で察していたのでそこは良いとして、時代考証以外もけっこうガバガバ。攻略対象と現代に戻るエンディングはジェットコースターに乗ったかと思うぐらいスピーディーにはしょられてて笑った。展開もご都合主義が多い。そして、元がアプリゲームだからか物語の継ぎ目がスパッと切られている。悪く言えば余韻が無く、良く言えばこざっぱり。容赦ないので最初は面食らった。
で、全体的に雑なんだけど、そこが良かった。雑な代わりにロマンチックは頭一つ抜けている。浪漫に理屈やらリアリティのある酸いやらなんやらを期待するのは粋じゃない。ガバガバだからこそ情緒が惹きたつ、「雑さ」が良い効果を及ぼしているめずらしい作品


舞台が「明治」というのも良い。異国の香りをまといはじめた和洋折衷な時代が、これ以上になく「明治東亰恋伽」のロマンチックさに合っている。

鴎外
「なにせ突然現れたと思ったら、突然消えて。
幸せな夢ではあったが──
どうも目覚めが寂しくていけない」

鴎外√より引用

文章は瀟洒、簡潔だけど詩的。こういうロマンチックな作品の文章はくどいぐらい装飾華美なのが私は好みだけど、めいこいはこの文章がピッタリ。
キャラクターも好き。全員良い意味で変人奇人で嫌味ったらしくない愛嬌のある人たち。主人公は普通の女子高生だけど食い意地が張っていて「牛肉」に対してはやたら執着する、これまた愛嬌のある少女。そんな好感の持てるキャラたちがコミカルにわちゃわちゃするのは楽しい。物語の完成度よりも登場人物の掛け合いを重視するタイプの恋愛ADVは、プレイヤーが登場人物をどれだけ好きになれるかが大切になると思う。その点でいえばめいこいは120点花丸。そしてカラッとしたギャグとは裏腹に、恋愛沙汰になるとしっとりとした面を見せるのだからずるい。

いままでダミヘで感情が動くことは数えるくらいしかなく、自分とダミヘは相性が悪いんだと思っていたけれど、本作は雰囲気の相乗効果もあるのか効いた、すさまじかった、特に春草。KENNさんの声をちゃんと聴いたことなかったけどスゴいですね、私は基本的に美少女ゲームのオタクなのに雌になっちゃうよ。でもキラキラエフェクトは爆笑、ダミヘシーンの開始演出なんだけどシュールで毎回笑ってしまう。 

 

人物のグラフィックは、ややクセのある絵柄で清潔感がある。ただ、乙女ゲーム全体でいうと、あまりうまい絵ではない。立ち絵はわりかし安定しているだけに(女形川上の照れ絵かわいい)、スチルのデッサンが崩れているのが気になってしまった。雰囲気で呑めるような絵でもないので、なおさら。ここは好みでしょう。

 

OPは好み、大好き、特にPSP版OP。アップテンポな音楽ときらびやかな演出が魅力的。自分が読んできた歴代乙女ゲームのなかでも1,2位を争うぐらい好きなOP。

まとめ

楽しかった。ただ、めいこいは冒頭の通りガバガバな部分はとことんガバガバなので、周辺設定はざっくりしている。でも攻略対象が「歴史上の偉人」というバックボーンを持っているので、ある程度脳内補完できる。刀剣乱舞が流行ったときにも思ったんだけど史実がバックボーンにあるコンテンツは強い。スキマを想像力で埋められる、ようするに雑さが弱点にならない。 
あと、エロや残虐描写が無いのがこの作品にはピッタリ。そういう描写があったらまったく別の印象を抱いてた。くちづけひとつでときめける、少女小説を読んでいるかのような「そういや乙女ゲームってこういうときめきがあったなあ」と回帰できる、プリミティブな作品だった。「浪漫」を楽しめるプレイヤーはスゴくハマる、わたしもその層なのでスゴく楽しかった。
8周年を迎えた現在でもソシャゲやらアニメやらコンテンツが派生している理由がわかった。あったかくて、ちょっと懐かしい、ロマンチックな物語だったよ。

 

それとアニメも全話見た。メイン√は鴎外だけれど、自然と目がいったのは横恋慕する春草。鴎外の優しさや芽衣のけなげさが輝くほどに春草は苦悩する。特に11話は良い。画家モード以外は淡白な春草が、うつくしい言の葉を穏やかに紡ぎ、芽衣に触れる。芽衣と鴎外の近くにいたからこそ、誰よりも二人のことを想って矛盾に苛まれていた彼が、恋する少女に今までで一番ちかい場所にいる。けれど、これは春草にとって失恋を自覚するシーンじゃないかなあ、と思った。衝動もあるとはいえあそこまで近づくのはあの瞬間だけでしょう。その刹那の儚さと、狂おしい情動。良かったです。

「刃鳴散らす(はなちらす)」の感想・レビュー

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こういう物語です(ちなみに会社はニトロプラス)。
最初の章のサビ、開始1時間?くらいで辿りつけるシーン。ここが私は「刃鳴散らす」で一番好きで、この言葉を見れただけで値段以上の価値があった。わたしが好きな男の関係は”殺し屋1”の垣原とイチ、"バーミリオン"のトシローとアイザック、"俺たちに翼はない"の主人公とカケルくんなのでそういう事です。

 

シナリオは短い、頑張れば1日で終わる。(女性との)セックスシーンがあるので「美少女ゲーム」という看板で一応売ったのかと思うけど、ヒロインは最初の章で死ぬし中盤で死ぬしどこかに行くしここまで女の存在が添え物なのを隠さないとかえって清々しい。各ヒロインED(というかバッドエンド)はあるけれど語弊を恐れずに言うなら「あとから付けたのかな?」という取ってつけたようなそういやコレは美少女ゲームだったわヤバと後出しジャンケンなED。赤音の姉関連のEDはけっこう重要だけどあとは…そうだね。
男がひとりの男への復讐を心待ちにして斬って斬って斬って男と男の巨大な感情をただただ追っていく物語です。赤音の執着や伊鳥の憎悪は正直恋情と同じくらいの熱量で、この作品をボーイズラブと揶揄するのもまあ納得してしまう。というかネタEDがBLだった。赤音はモノローグで「伊鳥を憧憬していた。その剣に恋していた。」と名言されているし多少はね。

大崎シンヤさんの絵は達者で美女も屈強な男も優男もうまい。美少女ゲームの絵にしては線が細い印象で、戦闘剣術モノにしては全体的に耽美な雰囲気なのは男の関係以外にも絵が影響していると思う。あと、初回特典冊子表紙の赤音が艶やかで気にいっている。濡れた瞳で少女のような容貌、屈強な男の首が転がり血に汚れた刀を持つ凄惨な状況。アンバランスさが倒錯的でなんともいえない魅力を醸すビジュアルです。コレなんだけど生首が転がっているから苦手なひともいそう、なのでリンク先注意。

奈良原さんの作品は初めて読んだけどおもしろかった。村正が有名なのは知っていてイメージ的にガッチガチに硬派な文章を書く方だと思いこんでいたけれど、予想よりも柔らかくて読みやすい。そして「本格剣劇浪漫ADV」と銘打つだけあって本編の7割くらいが剣術の描写、短い作品なのにヒロインよりも人間よりも剣術の描写が多い。わたしは剣術に疎くて竹刀を握ったことも無ければ武道に触れたことがないけれども、未知の分野にも興味を抱かせる説明がとても良かった。

 

まとめ、面白かった。疾走する物語だった。男が男を追って戦った末は破滅的で、お世辞にも爽やかとは言えない後味は沼のなかで呼吸するような息苦しさはあったけれど美学を感じる。でもミニゲームが出るEDは笑った、なんだよアレ。茶屋の娘さんがスゴく聞き覚えある声で、ちょい役にしては豪華な声優さんだなあと思ったらそういう事ですか。
ただ、ひとつ難点を言うならば、赤音の声優さんが合っていないように感じた。このシナリオなら男性声優さんのほうがしっくり来たかもしれない、それかもっと硬い声の女性声優さん。演技もなんかフニャフニャしていて赤音の根無し草な部分をあらわすならそれでいいかもしれないけどもうすこし狂気的な、剣術とひとりの男に傾倒する硬さが欲しかった。偉そうなこと言っちゃった、ごめんね。

あとタイトルの「刃鳴散らす」を「はなちらす」と読ませるセンスが洒落ている。好き。なのでこの記事のタイトルにもフリガナを振っておきました。